大都市圏のオフィス賃貸市場は、CBRE株式会社『賃貸不動産市場その動向と相場2019年6月期』によると、低水準の空室率で推移しており新規賃料も概ね上昇傾向です。
そのため、ビルオーナー様の立場からすれば【賃料(家賃)増額】を図る圧倒的なチャンスといえます。
さらに、昨今の大都市圏における土地価格は大幅な上昇傾向にあります。
それに伴い、固定資産税も増加することになり(負担調整を考慮しても3年間で20%ずつ増加するような立地もあります)、オーナー様側としても増額を主張しやすい状況です。
ただし、当然ながらテナント側からすれば【賃料(家賃)増額】に対して抵抗するでしょう。
テナントの賃料(家賃)負担力を考えない「強気の交渉」のスタンスでは、賃料(家賃)増額交渉がズルズルと長引くだけです。
つまり、賃料(家賃)の改訂の流れとしては、一方の当事者から賃料改定の申出がなされ、当事者間で交渉を行うことになります。
このレベルでの交渉は、交渉時点におけるオーナー・テナントの力関係を前提に、「現在の賃料水準」と「仮に新規で締結するとした場合における本来の賃料水準」の間で合意賃料を探ることが基本となります。
しかし、当事者間での交渉がまとまらず決裂した場合、まずは「調停」に付され、これでもまとまらない場合は「訴訟」手続きとなります。
このレベルになると、これまでの固定資産税といった「公租公課」や土地建物価格といった「元本価格」の推移や、これまでの賃料改定の経緯が検討要因に加わり、結果として当事者間の交渉時ほどの改定が得られないことが多くなる(例.当事者交渉時には500万円の増額が見込めたのに、調停時には300万円の増額、訴訟時には100万円の増額しか見込めない、ということ)ほか、当事者だけでなく調停委員や裁判官といった人的要因も入ってきて、結果が出る(=終結する)のに「月単位」でなく「年単位」となることも多いです。
このような想定から、出来得ることとして、「事前に」専門家等の第三者のアドバイスを得て「落としどころ」を明確にすることが理想的です。
具体的には、賃料(家賃)評価を得意とする不動産鑑定士に相談されて、
・本来の賃料(家賃)水準
・交渉で「有利」な要因と「不利」な要因
のアドバイスを受けたうえで、
・想定される「落としどころ」
を事前に踏まえておかれることを提案します。
そして、「賃料改定(増額)も仕方ない・・・」とテナントに思わせるだけの資料を準備されることをお勧めします。
なお、具体の賃料(家賃)改定「交渉」を不動産鑑定士は行うことができません。
不動産鑑定士がこれを行うと、弁護士の独占行為を弁護士以外の者が行う「非弁行為」に抵触するからです。
そのため、弊所にお声掛けいただいた際、ご要望があれば賃料(家賃)改定の経験が豊富な弁護士先生を紹介させて頂くことも可能です。