10万円前後で不動産投資をする方法

給与が上がらず、商品やサービスの値上がりが続くなか、老後の生活に不安を抱える人は多いのではないでしょうか。今後インフレ傾向になるのは昨今の報道なりをみているとほぼ確実かな~と思ったりする人も多いと思います。
そして、これまでどおり銀行預金をしていることにリスクを感じて「投資」に興味を持っている方は少なからずいらっしゃると思います。

投資といえば、その代表的な投資対象は「株式」や「債券」、そして「不動産」ですが、いわゆる実物不動産投資は特に資金的ハードルが高いものです。

今回は比較的少額でカンタンに始められる「REIT(リート)」についてその概要を紹介します。

 

REITはこんな商品

実物不動産投資のデメリット

不動産投資といえば、こちらの記事で紹介したワンルームマンション投資が代表的です。さらに、一棟アパートや駐車場、トランクルームも不動産投資の一例になります。
https://mura-kan.com/1room/

これらの実物不動産投資は、どうしてもまとまった資金が必要になり資金調達で苦労する可能性があるというのが現実です。また、物件選びの専門的知識が求められますし、物件のメンテナンスや空室リスクのほか、転売しようとすると買手探しの手間もあります。このようなデメリットに対処するために不動産投資のプロといわれる業者さんがいるわけです。

ただし、一概に業者さんといっても千差万別なので、いかに信頼できる業者さんを選ぶか?が大変ですし、不動産投資の「肝」になります。

 

REITの良いところ①:少額ではじめられる

一方、REIT(リート:Real Estate Investment Trustの略で不動産投資信託のこと)は、少ない資金(10万円前後)で株式と同じように売買できる投資商品です。REITの仕組みの概要は、賃貸に出している不動産からの賃料(収益)や売却益などから手数料を差し引いた金額を投資家に分配するというもので、イメージは「REITによる分配金=株式の配当」となるでしょうか。

 

REITの良いところ②:専門的知識は不要

投資家は対象となる実物不動産を実際に取得するわけではありません。投資家はあくまでも専門の不動産投資法人が発行する不動産投資の有価証券を売買するだけです。物件は不動産投資法人が選択しますし、物件の購入資金は不動産投資法人が金融機関や投資家から集めますし、投資家自らが投資対象の不動産を管理する必要もありません。

また、REITはオフィスビルやマンションだけでなく、商業施設やホテル、倉庫なども不動産市況をみてプロの不動産投資法人が「儲かる!」と判断すれば対象となります。でも、運用はプロが行いますから、REITをはじめたい!と思っても物件選びの専門的知識を完全に習得・理解する必要などありません。その対象が株式や債券でなく不動産という点は違いますが、株式や債券で運用する投資信託を買うのと同じです。

 

REITの良いところ③:リターンが大きい

低金利時代において、REITの利回りはこの10年間はだいたい3~4%で推移していて、2%前後で推移している株式投資や他の投資信託よりも高いものになっています。

この「直接的」なリターンだけでなく、REITには特別な税制があり、利益の90%以上を投資家に還元することを条件に不動産投資法人の法人税が非課税になるとなっています。そのため投資家は魅力的な配当利回りが期待できるという「間接的」なリターンもあります。

 

REITのリスク

上記のようにREITは実物不動産投資のデメリットをカバーしてくれる仕組みを持っています。
とはいえ、REITも絶対に安全な投資商品というわけではありません。

REITのリスク①:価格が毎日変動する

REITは証券取引所に上場しているので価格は毎日変動します。つまり元本価格は保証されていません。上場している法人の株式も景気動向に影響を受けていますし、例えばその法人が不祥事を起こせば一気に株価は下落することがあります。REITも同様の動きを示すことは大いにあり得ることです。
また、不動産の評価額の変動や資産の入れ替えによる運用成果によって、価格が大きく変動する可能性がありますし、その変動幅は純資産と負債のバランス次第で増幅する可能性があり、かなり流動的な性格を持っています。

 

REITのリスク②:分配金も変動する

REITの価格が変動する可能性が高いということは、不動産の賃貸収入等も変動することであり、そこから発生する分配金も一定ではなく変動するということになります。ハッキリ言えば物件の賃貸収入が下落するようなことがあれば分配金も下がります。

 

REITのリスク③:スポンサーの動向が大きく影響する

実物不動産投資なら市場の需給動向や市況の見込み、法制度(建築規制や税制など)の変更が変動の大きな要因として挙げられます。これらに加えて、REITはスポンサー企業の動向も大きく影響します。
つまり、スポンサー企業に倒産等の事由が発生して撤退するようなことがあれば、その企業が関わったREITの運用事業は大きな影響を受けることになります。

 

REITのリスク対処法

上記ではREITの代表的なリスクを3つ挙げてみましたが、要は株式や証券と同じように、リターンも大きいですがリスクも大きいということ。

このリスクに対処するため、REITを取り扱う不動産投資法人は集めた資金を複数の不動産に分散させます。つまり、物件によってはハイリターン・ハイリスクのものもあれば、ローリスク・ローリターンのものもあるので、これらを組み合わせることで投資家への分配金の急激な減少を抑えているわけです。

 

REITのメリットとデメリット(リスク)

REITのイメージを整理するために、メリットとデメリット(リスク)をまとめます。

【メリット】

  1. 実物不動産投資と違って10万円程度の少額で不動産投資の恩恵を享受できる
  2. 管理や運用は専門家が行うので手間がかからず専門知識は不要
  3. インフレになると不動産価格や賃貸料も上がることが多く、それに伴いREITの価格や分配金の上昇が期待できる(つまりインフレに強いということ)
  4. 複数の不動産に分散投資することができる
  5. 証券取引所に上場しているので簡単に売買できる(換金性に優れる)

【デメリット(リスク)】

  1. 不動産市場や景気によって短期間に価格が変動する(下がる)リスクがあるし、証券取引所に上場しているので価格は毎日変動する
  2. 投資対象の不動産が自然災害や火災などで被災した場合は賃料収入が下がる
  3. 金利が上昇している時は金融機関への借入返済額が増える
  4. 分配金は一定でなく短期間で変動する可能性がある
  5. スポンサー企業の動向が大きく影響する

REITは現物不動産投資と違って、自分の手で物件の資産価値を上げて賃料収入に反映させることはできません。しかし、管理などを専門の不動産投資法人に任せることで手間はかかりませんし、不動産投資について専門知識を深く勉強する必要もありません。

  • 手間はかかるけど「リターン」を重視するか?(実物不動産投資をとるか?)
  • リターンは減るけど「手間をかけない」ことを重視するか?(REITをとるか?)
  • 分散投資の意味合いからどちらもやるか?

どの戦略をとるのかは投資に対する考え方(好み)により分かれます。ただ大事なことは実物不動産投資もREITも不動産を対象にしていますが大きな違いがあるということ。この違いを認識することは大切です。

 

まとめ

私が勤務鑑定士だった15年ほど前の2008(平成20)年前後、嫌というほどREIT案件の鑑定評価を行いました。その頃はそれまで順調に拡大していたJ-REIT市場がリーマンショックの影響を受けて調整を強いられた時期でした。
投資家層を増やそうとして設立されたREITでしたが、景気状況の悪化をモロに受けていくつかの不動産投資法人が撤退(倒産)した記憶があります。

一転してその頃に比べ、現在は制度の成熟化が進んで身近な投資手段の一つになった感があります。
例えば、つみたてNISAの商品の中にはバランス型のものがあり、「eMAXIS Slimバランスファンド」のように国内外の株式・債券だけでなく、REITやREITに投資する投資信託にも分散して投資する8資産分散型もあります。

 


(資料出所:三菱UFJ国際投信株式会社作成の交付目論見書)

 

とはいえ、REITは絶対に安全な投資商品というわけではありません。

それを踏まえて、不動産投資に興味があってまずは少額から始めたいと思っているのなら、REITに投資する投資信託を利用すれば積立投資による購入時期の分散もできるかと思いますし、すでに株式投資をされているのなら同じ口座で始められるはずです。

 

※この記事は2023年9月23日時点の情報に基づいています。

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