ある個人の方に「不動産業者の査定書」をみてくれないか(正しいものなのか確認して欲しい)、とお願いされました。
【物件概要について】
モノ自体は「戸建住宅」です。
立地条件としては、駅からはバスを利用せざるを得ない距離にありますが(いわゆる郊外の住宅地)、小学校や日用品店舗(スーパー)、金融機関(郵便局)、クリニックセンターといった施設には徒歩圏内にあります。
画地(土地)条件としては、道路に等高で、間口は狭すぎず・広すぎず(約12m)、奥行は浅すぎず・深すぎずですし(約17m)、形状は整形地で、規模も大きすぎず・小さすぎずです(約200㎡)。
上物(建物)は、築15-20年で、特段リフォームなどは行っていない軽量鉄骨造です。
諸事情で上記戸建住宅(自宅)の売却を考えていて、ある不動産業者にいくらぐらいで売却できるかを相談したところ、価額について意見を述べる時は法律(宅地建物取引業法)でその根拠を明らかにしなければならないから、といって後日、その不動産業者から「査定書」が提示された上で、数ヶ月以内で売却するならこれぐらいの価額という金額が示されたそうです。
ちなみに、不動産の価値を評価するには、不動産業者による無料の「査定書」と、不動産鑑定士による有料の「鑑定評価書」の2種類があります。
査定書は無料ですので、不動産の売買を具体的に進めたい時などは不動産業者の査定書をご利用されてイイかと思いますが、不動産業者からいわゆる「営業」の連絡がしばしばあることは覚悟しておいた方がよろしいです。
【査定内容について】
さて、不動産業者の査定書の中身を拝見しました。
全く知らない地域では無かったので、特に土地価格については、その相場感(単価レベルだとこれくらい、総額レベルだとこれくらい・・・)を持っています。
その相場感からみて、不動産業者による査定書での土地価格は「割安」です。
ナゼなんだろう?
そう思って中身を精査すると、どうも「土地価格(単価)=相続税路線価」になってました。
【相続税路線価とは】
相続税路線価とは、相続や遺贈または贈与による取得した財産にかかる税金を算定する基準となる路線価のことで、下記の国税庁サイトから確認できます。
実勢価格を100とした場合、相続税路線価は80程度の割合とされています。
つまり、実勢価格(単価)が1㎡あたり100万円であるなら、相続税路線価は1㎡あたり80万円となります。
ということは、相続税路線価を80%で割り戻せば、実勢価格(単価)を推量することができます。
ただ、注意しなければならないのは、全てが実勢の80%というわけではありません。
例えば、都心中心地など土地需要が強いエリアでは、実勢単価:路線価=100:50~70といった具合に、乖離が大きいことがあります。
一方、郊外など土地需要が弱いエリアでは、実勢単価:路線価=100:90~100という場合も見受けられます。
今回、私が拝見した不動産業者の査定書も「土地価格(単価)=相続税路線価」、つまり「実勢単価:路線価=100:100」となってました。
しかし、念のため確認した同エリアでの取引事例データをも鑑みれば、「土地価格(単価):相続税路線価=100:80」の関係が成立する立地です。
これは完全な推測ですが、不動産業者はより安く買い取って、再販売する際に利益をより多く取ろうとしたのか、そもそも再販売をし易くすることを考えたのでは・・・と勘ぐりました。
このように場合によって、不動産業者による無料の「査定書」はやや精度が劣ることもあります。
それを金額で考えると、数百万円ブレる場合もあるでしょう・・・
とにかく、不動産業者の査定書を利用する場合は、その不動産の特徴(アピールポイント)を不動産業者はどのように把握しているのかを踏まえた上で、査定額の根拠を不動産業者はわかりやすく説明できているのか?をしっかり確認されて下さい。