不動産鑑定のご依頼があった時にどうして鑑定評価が必要になったのか?と、ご依頼の背景を伺います。
その問い合わせに対して、たまに
「相続で否応なしに不動産を抱え込むことになったけど、利用する予定などなく、持っていても税金がかかるし管理も面倒だから早く売りたいから」
というご回答があります。
「いやぁ、ウチは不動産の鑑定、つまり値付けをしていて、不動産の売買は業務にしていないんですが・・・」
そう告げると、
「そうですか・・・」
と、引き上げる方もいれば、
「不動産を売るなんて初めてのことだから、一般的なことで良いのでアドバイスをちょうだい」
と、助言を求められる方もいます。
そんな過去にした助言の内容を今日はまとめてみました。
業界では一般的なものですが、業界以外の人には専門的すぎるかも知れません。
何かの知識になれば幸いです。
■業者選びのポイント
家や土地といった不動産を売却する場合、自力で買主を探して売買契約を結ぶことは簡単ではありません。
そのため、不動産業者に依頼するのが一般的です。
そして、家や土地を少しでも早く売るには、業者選びや契約方法などのほか、売り出す際の価格設定がポイントになります。
■適正な価格査定ができる業者を選ぶ
まずは不動産業者による物件の価格査定がスタート。
その際、すでに信頼できる業者がいる場合はその限りではありませんが、単独の業者だけだと相場を読み違える場合があるため、なるべく複数の業者に依頼する必要があります。
査定結果について、納得できる理由をきちんと説明できる業者は信頼できますが、調子の良いことばかり言う業者には注意が必要です。
なお、当事務所では不動産の売却といった業務は行っておりません。
大事な不動産の売却に当たって当事務所がお手伝いできる事は、不当に安く売ってしまう事を防ぐために「売却価格のモノサシ」をお示しすることと、場合によっては有能な業者さんをご紹介することです。
ですので、これ以降の内容については一般的な知識としてお読み下さいませ。
■最適な業者との媒介契約を選ぶ
複数の不動産会社と綿密なコミュニケーションを取ってこれは信頼できる!という業者が見つかればその会社と契約を結ぶわけですが、いわゆる売却のサポートを任せる契約のことを「媒介契約」と呼びます。
この媒介契約には3種類あり、自分の利用スタイルに合ったものを選択するべきです。
実際に売り出してからはこの契約の通りに取引が進んでいくことになるのでとても重要となる契約ですし、重要だからこそ契約を結ぶことは法律で決められてもいます。
専属専任媒介契約
これは特定の不動産業者のサポートのみで他の業者を利用することができない契約方式です。
自分で買主を見つけてきた場合についても依頼した不動産業者を通して取引することが義務づけられてます。
売却において全てを会社側に任せてしまいたい売主に向いています。
その分、サポート力は高く、週に1回は業者に対して業務報告を行う義務があります。
専任媒介契約
これも他の業者を利用することはできませんが、専属専任媒介契約より売主に自由度がある契約方式です。
例えば、自分で買主を見つけてきた場合に業者を通さなくても良いというメリットがあります。
業者には2週間に1回は業務報告の義務があります。
一般媒介契約
これは複数の不動産会社に同時に仲介を依頼することができる契約です。
特定の会社を利用しなければならない義務はなく、まだ本格的に話を進めたくないというときに役立つものですが、一方、業者には報告義務も発生しないため綿密なサポートはありません。
一般的に、不動産業者が営業に力を入れるのは、自社だけに依頼してくれる専属専任媒介契約(若しくは専任媒介契約)だと言われています。
不動産業者は売買が成立した場合のみ手数料が発生して利益を得ることができるので、複数の業者に依頼することができる一般媒介契約では他の不動産業者に売られてしまって営業コストが無駄になる可能性があるためです。
ただし、専属専任媒介契約や専任媒介契約になると、多くの業者と接することができなくなるデメリットがあります。
より協力的な担当者を探すには一般媒介契約が有利なのかもしれません。
いずれにせよ、一旦契約を結べば不動産業者とは法律上の関係にあるということは注意を要します。
■業者との契約後に注意するポイント
例えば、契約した業者が利益を確保したいために物件情報を自社で抱え込んで他社に紹介せず、自社で買主を見つめるまで情報提供を拒否するケースがあります。
これを「囲い込み」といいます。
これは売主にとって不利な行為なので、法律によって故意に情報を隠すことや独占することを禁じています。
そして、囲い込みを防止するため、媒介契約を受けた場合は決められた期間内に物件情報を指定流通機構(レインズ)へ登録することが義務付けられています。
レインズは業者同士で共有しているデータベースのようなもので、他の不動産会社にも不動産情報が行き渡ってたくさんの購入希望者に紹介されますし、レインズ登録により取引状況は売主からも状況をリアルタイムで把握できることになります。
そのため、契約後は不動産情報を業者が囲い込みしていないか?に注意しましょう。
一方、売主側にも業者との契約後に注意するポイントがあります。
それは、業者に対して物件に関する情報をキチンと伝えることです。
もし、設備などに不備があることを事前に把握していたにもかかわらず、伝えてなかったり伝えきれずにいると、売却後に不備が発覚すると瑕疵担保責任による賠償問題に発展しかねないからです。
■業者のモチベーションを上げる
不動産を少しでも早く売るために業者のモチベーションを引き出す方法があります。
その1つに、仕切り価格(売りたい希望価格)を設定し、これを上回る価格で売る事に成功した場合、その上回る分を通常の手数料のほかに支払うとする交渉方法です。
物件がなかなか売れない場合、単純に価格をディスカウントするよりも業者により頑張ってもらうことで売買が好転する可能性があります。
■適正価格よりも安く売り出す
不動産を所有している間は固定資産税や都市計画税が発生します。
なかなか売れずに所有している期間が長ければ長いほど、納める税金がかさむことになりますから、安く売り出すことが決して損するとは限りません。
また、家は老朽化するもので、築年数が経つにつれて資産価値が下がりますし、特に新しい家であるほど1年ごとの下げ幅は大きく、なかなか売れなかった場合は大幅に価格を下げる可能性も出てきます。
そういったことから先に安く売りに出してしまった方が得になることもあります。
■取引が活発になる時期を選ぶ
転勤や進学などで人の移動が多くなる春先の2月末~4月初は不動産取引が活発になります。
この時期に売り出すというのも戦略の一つです。
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家や土地といった不動産を早く売りたいとき、売り出す価格も大事ですが、不動産業者や買主さんとの良好な関係を築くことも大事なポイントです。
後悔しない売却をするために面倒がらず、手間暇をかけて下さいませ。
そして、売り出し価格について疑問などがあったら、セカンドオピニオンとしての専門家の意見をお伝えしますので、その際はどうぞ当事務所にご連絡を下さいませ。