円安が進む今、日本の株と不動産はどうなるのか

ここ数年、日本円の価値は対ドルをはじめとする主要通貨に対して下落基調が続いています。これは一時的な相場変動というより、金利差や財政運営、人口動態といった中長期的な要因が複合的に影響している結果と考えられています。

さらに、高市政権は「積極財政」という名のもとに円を増発して、市場に供給しているのでこの流れは止まるところを知りません。

そのため、ゴールドやシルバーといった実物資産だけでなく、多くの外国通貨に対して円安が進んでいる現状を見ると、「円を持ち続けることのリスク」を意識する人が増えるのも自然な流れでしょう。

 

こうした環境下では、「円を現金のまま保有するより、価値が相対的に目減りしにくい資産へ移した方が良いのではないか」という発想が生まれます。

実際、外貨、貴金属、株式、不動産といった資産への関心が高まるのは、通貨価値が不安定な局面ではよく見られる現象です。元の記事で述べられているように、「損得だけで考えるなら、円や円建て資産からの撤退が正解となる」という考え方が浮上するのも無理はありません。

 

ただし、ここで注意したいのが「円建て資産」の捉え方です。

日本株や日本の不動産は、確かに円建てで評価される資産です。そのため、円の価値が大きく下落する局面では、外貨ベースで見た場合の評価額が目減りしやすくなります。

歴史を振り返っても、通貨安に見舞われた国では、株式市場や不動産市場が一時的に調整局面を迎え、その後、価格が落ち着いた段階で外国人投資家や外資系ファンドが参入するケースが多く確認されています。

 

例1. タイ(1997年 アジア通貨危機)

最も教科書的な事例の一つです。

1997年、バーツが急落し、固定相場制が崩壊しました。それまで外貨建てで資金調達していた不動産開発業者が返済不能に陥り、不動産市場は一気に冷え込みます。

  • 通貨安 → 外貨建て債務の実質負担が急増
  • 開発プロジェクトの停止・破綻が続出
  • バンコクを中心に地価・不動産価格が下落

その後、価格が底打ちした段階で、外資系ファンドが不良不動産を大量に取得しました。

 

例2. 韓国(1997年 アジア通貨危機)

タイとほぼ同時期に危機に見舞われた国です。

ウォンが急落し、金融機関・企業が大きなダメージを受けました。不動産も例外ではなく、特に商業不動産や分譲市場で価格調整が起きています。

  • 通貨安+金利急上昇
  • 住宅ローン返済負担の増大
  • 不動産価格の下落・取引停滞

こちらも回復期には、海外投資家が韓国不動産を割安で取得する動きが目立ちました。

 

例3. ロシア(1998年・2014年)

ロシアは複数回、通貨急落を経験しています。特に2014年のルーブル安(原油価格下落+制裁)は、不動産市場に強い影響を与えました。

  • 通貨急落により実質所得が低下
  • 国内需要の冷え込み
  • 不動産価格の下落(特に高級・投資用物件)

外国人投資家から見れば「安くなった」一方、国内購買力の低下が価格を押し下げる要因となりました。

 

例4. トルコ(2018年以降)

比較的最近の事例として参考になります。リラ安が進行する中で、不動産価格は通貨ベースでは上昇、外貨ベースでは下落という現象が起きました。

  • 国内通貨表示では「価格が上がっている」
  • ドル・ユーロ換算では「実質的に下落」

 

結果として、外国人投資家には割安に映り、国内居住者には買いにくい市場になっています。これは「円安下の日本不動産」を考えるうえで非常に示唆的な例です。

これらの国に共通するのは、

  • 通貨安=即、不動産が上がるわけではない
  • 多くの場合、一度は不動産価格が調整・下落する
  • 価格が落ち着いた後、外国人・外資が参入
  • 国内投資家は購買力低下で置き去りになりやすい

という流れです。

 

日本はこれらの国と制度・信用力が異なるため、同じ結末になるとは限りません。

ただし、円安が長期化した場合や、外貨ベースで見た日本不動産の割安感が強まった場合は、「外から見ると安いが、内側では買いにくい」市場構造になる可能性は否定できません。

その意味で、「円だけでなく、円建て資産の扱い方を考える必要がある」という問題提起は、歴史的にも十分に裏付けがあります。

 

そうは言っても、その一方で円安がすべての日本資産にとって一律にマイナスというわけではありません。

輸出比率の高い企業や、インバウンド需要の恩恵を受ける業種、不動産でも賃料収入を主目的とする実需物件などは、円安局面で相対的に評価されることもあります。

いわゆる特定の政策期待銘柄や、金融機関の融資が入りやすい一部の不動産分野が短期的に値を保つ、あるいは上昇する可能性も否定はできません。

 

それでも、マクロの視点で見た場合、日本全体の不動産価格については慎重に見る必要があります。

人口減少、金利環境の変化、建築コストの上昇といった構造的な要因を踏まえると、今後は「全体としては調整・下落方向に進む」と予想する見方が徐々に現実味を帯びてきています。

円安による一時的な下支えがあったとしても、長期的にはこれまで以上に不動産の選別がより厳しくなる可能性が高いでしょう。

 

国を愛する日本人として、日本経済や国内資産を支えたいという気持ちは自然なものです。

しかし、個人の資産形成という観点では、感情と判断を切り分けて考える冷静さも求められます。

円だけを見るのではなく、「円建てで評価されている資産全体が今後どのような影響を受けるのか」を一段引いた視点で捉えることが、これからの時代にはより重要になっていくのではないでしょうか。

 

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