能力がある不動産鑑定士かどうかを見極める方法
不動産の鑑定評価書は裁判での係争で用いられることもあります。
そして、原告・被告のそれぞれがとった鑑定評価書を並べたとき、鑑定評価額が大きく違うことがあります。
鑑定評価書は「鑑定評価を行った不動産鑑定士の判断であり意見」ですから、ある不動産に対しての鑑定評価額がピッタリ合致しないことは多々あります。
では、鑑定評価額に誤差とは言えないぐらい「大きな開差」が生じるというのはどういうことでしょうか?
不動産の価値は、時間の経過や需給変化とともに変化するものですから、いつの時点の価格なのか?ということが大事な項目です。この時点に差異があれば結果(鑑定評価額)にも差異が生じる可能性があります。
また、鑑定評価の対象となる不動産を隅々までキッチリと確認して評価するのと、立ち入りができず秘密調査で行わざるを得なかった場合の評価でも結果に差異が生じる可能性があります。
そのほかの可能性もありますが、しかし、ある不動産に対して鑑定評価額に大きな開差が開いてしまうのは、評価を行った不動産鑑定士の能力の大小(有無)が原因の場合があります。
前回のブログで予告しておりました、この【能力がある不動産鑑定士かどうか】を見極める方法ですが、結論を申し上げますと、大切な資産である不動産の評価を不動産鑑定士に依頼する際、その不動産鑑定士に対して「鑑定評価の評価方針」を尋ねてみることです。
(大事なのは「依頼する際」に!です。)
その時に「資料を検討してみないとわからないので即答できない」などと、暗黙的に「評価のやり方がわからない・・・・」と言っている不動産鑑定士の能力には疑問符が付きます。
不動産鑑定士による不動産の鑑定評価のやり方(手法)や鑑定評価書に記載すべき内容には、法律で決められた”ルール”があります。
対象となる不動産の種類(土地だけなのか?、土地建物一体なのか?、その用途は?、対象となる権利関係は?などなど)により、適用するやり方や、鑑定評価書に記載すべき内容(項目)が異なります。
また、その依頼される評価の目的によっては、提示すべき価格(賃料)についても配慮する必要が出てきます。
一定の経験・能力がある不動産鑑定士なら、依頼内容を伺えば「この手順で評価すれば良い」という評価方針が組み立てられ、鑑定評価に必要となる資料や鑑定評価書に記載すべき内容がアタマに思い浮かびます。
お恥ずかしい話ですが、不動産の鑑定業界には、依頼された評価業務を経験したことがない、若しくはどのように評価すれば良いのかわからないにもかかわらず、即答で「(その評価は)できます!」などとホラを吹く不動産鑑定士(=ホラッチ鑑定士)が存在します。
(経験豊富なはずの年配の不動産鑑定士でも!です。)
当然、評価の仕方がわからない(=能力のない)不動産鑑定士は他の同業者(不動産鑑定士)に、物件の詳細な情報は守秘義務があるので言わないでしょうが、評価のやり方を尋ねるでしょう。
そして、鑑定評価の基礎的な知識はあるでしょうから教えられたやり方で何とか鑑定評価書"もどき"を作成するでしょうが、自身の経験がない評価ですからツッコミどころ満載の「欠陥品」になることはおわかりになりますよね。
アナタはそんな「欠陥品」に高額な鑑定評価料を支払いますか?
先にも述べましたが、不動産の鑑定評価のやり方などには一定のルールがありますから、そのルールに当てはめれば良いケースが正直言って大半なのですが、当てはめる内容(項目)がまるで"筋違い"であったり、記載すべき内容が記載されていなければ、その鑑定評価書は「欠陥品」です。
依頼される方として、気になるのは鑑定評価額という「結果」だけかも知れません。
でも、その結果を出す根拠が正しくなければ、結果自体も信憑性に欠けますから、鑑定評価書に記載すべき「根拠」は非常に大事なものです。
その「根拠」の概要は評価方針で示されるものですから、依頼内容を伺った際に評価方針が組み立てられない、若しくは依頼される方が理解できない評価方針を言う不動産鑑定士に鑑定評価の依頼するのはオススメしません。
「わざわざ出向いてもらったから・・・・」とか「以前からの付き合いがあるから・・・・」という義理人情や、「安い鑑定評価料で評価してくれるから」といった理由で大切な資産である不動産の評価を依頼するのはおかしいと思います。
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