高齢者保護のために40年ぶりに大改正された「相続税」

7月1日に「平成31年」1月1日時点の

相続税路線価が発表されました。

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「令和元年」は5月1日からなので

あえて「平成31年」と示しました。

ほかの不動産鑑定士のブログなりを覗くと

「路線価」を話題にしたものが多いので

村本は、「相続税」に絡めながらも

「路線価」とは違う話題を

つづりたいと思います。

特に、税理士先生はご存知のはずですが、

昨年2018年7月に相続法改正がはじまり

今年2019年7月1日から順次施行されます。

それまでの相続法が見直されなかった40年間、

日本人の平均寿命が延びて

高齢化社会が進行しました。

そうなると、

相続させる方が80代や90代で、

相続する方が60代や70代ということになって

いわゆる「老老介護」とともに

「老老相続」も増えていきました。

このような背景もあって、

高齢になってから相続することになった配偶者を

保護するために法律の改正が行われたというわけです。

相続法改正のポイントは次の6つです。

1.配偶者がそのまま自宅に住めることに

日本人の典型的な相続パターンは、

自宅(持家)と預貯金のセットです。

例えば、夫が2000万円の自宅と

3000万円の預貯金を残して亡くなり、

相続するのが妻と子供だった場合、

法律上の妻と子の取り分は半分ずつです。

そのため、残された妻は

今後も住む場所が必要なため

2000万円の自宅を相続すると、

預貯金は500万円しか相続できず

今後の生活費が不足する問題が生じます。

そこで、自宅を「所有」する権利と「使う(住む)」権利に分けて、

そのうち「使う(住む)」権利(配偶者居住権)を優先することになりました。

先ほどの例でいくと、自宅の2000万円の価値を、

1000万円の「所有権」と、1000万円の「居住権」に分け、

子が所有権を、妻が居住権をそれぞれ相続することにより

妻は1500万円の預貯金を相続することができます。

(この制度は2020年4月から施行されます)

なお、相続する自宅の価値を、

行政や金融機関などにも説明する必要があって

キッチリと値付けしたい!ならば

当方へお声掛け下さいませ

2.婚姻期間20年以上の夫婦間の「自宅贈与」が遺産分割の対象外に

夫婦間で財産のやりとりがあると

「贈与税」がかかりますが、

婚姻期間20年以上の夫婦間ならば、

2000万円までは特例で贈与税がかかりません。

ほとんどの場合、自宅というのは夫婦で築いた財産なのに

夫婦間で贈与したら税金がかかるのはオカシイ・・・

ということで特例が認められているわけです。

ところが、例えば、夫が妻に自宅を贈与した場合でも

夫が亡くなったときには、その贈与はなかったものとされ、

相続の取り分を決めなくてはなりませんでした。

そこで、婚姻期間20年以上の夫婦間で自宅の贈与をした場合、

相続の取り分を決める際、贈与した自宅は対象外になりました。

先ほどの例(夫の財産が2000万円の自宅と3000万円の預貯金)でみてみます。

これまでは、2000万円の自宅を夫から妻に生前贈与していても

夫が亡くなった時は、夫の財産は5000万円と考えてました。

この5000万円を子と分けることになるため

妻は2000万円の自宅と500万円の預貯金しか受け取れません。

しかし、今後は2000万円の自宅は贈与されているので

3000万円の預貯金を子と半分ずつ分けることになります。

そのため、妻は2000万円の自宅と、

1500万円の預貯金を相続することができます。

3.遺言書の一部がパソコンで作成できるように

自分で書く遺言書「自筆証書遺言」は

これまでは、相続する人間が何人、何十人いても

それぞれ一つ一つを自分で手書きすることが

求められてました。

預金であれば、銀行名や支店名は勿論、

預金の種類や口座番号について

不動産なら登記簿謄本の情報について

そのとおり手書きしなければなりませんでした。

何かの事情で書き直すとなったら

とんでもない手間がかかります。

そこで、今回の改正では

「財産目録」についてはパソコンで作成可能となりました。

(2019年1月から施行済)

4.遺言書を法務局で預かってもらえることに

相続人の間で不信感が募ってもめる原因の一つが

遺言書が紛失したり、

遺言書を本人が書いたのか疑わしい

ということです。

まさにサスペンスドラマの展開です

そこで、2020年7月から自筆証書遺言を

法務局(つまり国)で保管する仕組みができました。

保管場所が法務局なら遺言書が紛失することはないですし

内容に疑義が生ずることもないです。

5.長男の嫁さん(妻)も財産取得ができることに

これまでの相続法では長男の嫁(妻)は、

相続させる方の人間(長男の親)と

血縁関係になく(赤の他人)、

どんなに長男の親を介護していても

相続人になれず(親族だけど)、相続財産を受け取れませんでした。

このような不公平感をなくすために

2019年7月からそのような親族は相続人に対して

金銭の請求ができるようになりました。

6.故人の預貯金の引き出しができるように

これまで故人の預貯金は

遺産分割協議が終わるか、

相続人全員の同意がないと

引き出すことができず、

医療費や葬儀費用といった緊急の出費に

対応できないものでした。

そこで、2019年7月から

金融機関に直接依頼するか

家庭裁判所に申立することで

上限アリの一定額を引き出せることになりました。

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